【コラム】
介護情報基盤で介護認定審査会(二次判定)はどう変わる?
事務局運営に残る運営課題と改善のポイント

介護認定事務の進め方が見直されつつあるなか、自治体では業務のデジタル化に向けた取り組みが進められています。その取り組みの一つとして進められているのが、「介護情報基盤」の整備です。介護情報基盤とは、要介護認定に関わる主治医意見書や認定関連情報などを関係者間で電子的に共有・活用するための仕組みです。こうした整備を背景に、自治体の介護認定事務においても、業務改善に向けた検討が進められています。
介護情報基盤の整備が進むことで、介護認定審査会(二次判定)に関わる事務局業務のうち、主治医意見書や認定関連書類のやり取りなど、審査会開催までの準備業務について、負担の軽減が期待されます。一方で、介護認定審査会(二次判定)は、必要な情報がオンラインで確認・共有できるようになっても、審査会の運営が自動的に効率化されるわけではありません。
実際の審査会では、資料整理、事前確認、当日の進行、結果記録といった運営そのものが、審査会を円滑に進めるうえで、重要になります。
本コラムでは、介護情報基盤で「効率化が進む業務(準備業務)」と「引き続き検討が必要な業務(審査会運営)」を整理したうえで、事務局が検討すべき審査会運営のポイントを具体的に解説します。
| この記事でわかること |
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目次
- はじめに|介護情報基盤で「効率化が進む業務」と「引き続き検討が必要な業務」
- 介護情報基盤で「変わること」:審査会開催までの準備業務はどう変わるか
- それでも「変わらないこと」:審査会は“運営の設計”が要る
- 介護情報基盤導入による業務の変化(Before / After)
- 介護情報基盤時代に審査会運営で押さえるべき3つのポイント
- 最後に|審査会運営の整備を具体化する「選択肢」
1.はじめに|介護情報基盤で「効率化が進む業務」と「引き続き検討が必要な業務」
介護保険業務のDXは、全国的な情報共有の土台である介護情報基盤の整備・活用によって進もうとしています。
厚生労働省は、令和8年4月1日以降、標準化対応が完了した市町村から順次、介護保険システムから介護情報基盤へのデータ移行と、介護情報基盤経由での情報共有を開始し、令和10年4月1日までに全市町村での活用開始を目指すと示しています。こうした流れの中で、自治体の現場では、介護情報基盤の導入により、介護認定審査会(二次判定)についても業務負担が軽減されるのではないかという見方が持たれることがあります。
結論から言えば、介護情報基盤の導入によって軽減が期待できる業務は確かに存在します。ただし、審査会の実務は「情報が整う」だけで完結するものではなく、資料整理・事前確認・当日の進行・結果記録といった運営の整備が欠かせません。
介護情報基盤は、自治体、利用者、介護事業所、医療機関等が、介護に関する情報をオンラインで閲覧・共有できる基盤として整備が進められています。
位置づけとしては、保健・医療・介護の各段階で発生する情報を分野ごとに分断されていた情報を共通の基盤に集約し、関係者間の連携を深めていく医療DXの取組の一部と説明されています。
ここで重要なのは、「情報がオンラインで共有されること」と「審査会が円滑に運営されること」は別の取り組みだという点です。
本コラムでいう「運営の設計」とは、資料整理・事前確認・当日の進行・結果記録といった、審査会を滞りなく進めるための手順やルールを整えることを指します。
介護情報基盤によって情報は集まりやすくなりますが、共有された情報を審査会でどう扱うかは、引き続き自治体側で設計する必要があります。
具体的には、次のような運営が必ず発生します。
つまり、介護情報基盤によって、書類の受け取りや確認といった準備業務は軽減されますが、審査会では、資料整理や事前確認、当日の合議、結果の記録といった運営の仕事は引き続き発生します。
2.介護情報基盤で「変わること」:審査会開催までの準備業務はどう変わるか
介護情報基盤による変化が最も表れやすいのは、審査会当日そのものではなく、審査会開催までの準備業務です。
従来、要介護認定に必要な情報は、紙や郵送、電話確認を前提とした運用になりやすく、事務局側の「受領・確認・共有」に相当な作業負担が生じてきました。この部分が、介護情報基盤によって見直されつつあります。
厚生労働省は、介護事業所が介護情報等をオンラインで閲覧・確認する際、「介護保険資格確認等WEBサービス(介護WEBサービス)」を利用することを示しています。
また、介護サービスを提供する医療機関についても、同様に介護WEBサービスを利用することができ、主治医意見書の作成・送信についても、介護WEBサービスを通じて行うことが可能とされています。
市町村(保険者)向け資料では、要介護認定事務(申請受付~認定審査会の開催)に関する業務変化が整理されており、主なポイントは次のとおりです。
• 主治医意見書を作成する医療機関が、介護WEBサービスで主治医意見書の作成・送信を行えるようになる。
• 認定調査をオンラインで実施・管理している場合、結果共有の迅速化が期待される。
• 認定審査会書類のオンラインでの共有が進むことで、印刷・郵送等の負担軽減につながる。
要するに、介護情報基盤の中心的な役割は、これまで負担が大きかった「受領・確認・共有」工程を軽くすることにあります。この改善が進むことで、審査会前の準備(資料収集・配布・管理)にかかる手間は、軽減されやすくなります。
ただし、ここで注意したいのは、介護情報基盤によって改善が進むのは、主に審査会開催までの準備業務であるという点です。
情報が集まりやすくなった後も、審査会で「どう見比べ、どう議論し、どう記録するか」という運営の負担が、解消されるわけではありません。
3.それでも「変わらないこと」:審査会は“運営の設計”が要る
介護情報基盤が整備されても、介護認定審査会(二次判定)が必ずしも円滑に進むとは限りません。保険者向け資料等が示す変化は、資料のオンライン化による迅速な受領や、印刷・郵送の削減といった審査会開催までの準備業務の改善に重点があります。
一方、審査会では、次のような運営上の作業が必ず発生します。
• 申請者ごとに資料をたどり、必要箇所を見比べる(※迷わず到達できる設計が必要)
• 委員が事前に確認し、論点を持ち寄る(※当日は判断に集中できる状態が望ましい)
• 当日に合議を進行し、決定事項を整理する(※進行の標準化・属人化の抑制が課題になりやすい)
• 判定結果を確実に記録し、後工程につなぐ(※記録・出力・共有を前提にした設計が必要)
これらは、「資料のオンライン化」だけでは解決しません。むしろ、介護情報基盤によって情報が集まりやすくなるほど、審査会側の「確認・比較・記録」にかかる負担が、かえって浮き彫りになります。介護情報基盤は、介護に関する情報をオンラインで確認・共有しやすくするための基盤を整備するものですが、審査会を円滑に進めるための具体的な運営方法までを定めるものではありません。
4.介護情報基盤導入による業務の変化(Before / After)
介護情報基盤では、要介護認定情報や主治医意見書、ケアプラン情報、LIFE情報の一部など、幅広い介護関連情報の共有が、将来的に想定されています。
また、介護に関する申請・提出・受信・確認などの作業をオンラインで進めていく方向性も示されています。
一方で、共有された情報を審査会でどう整理し、どう議論し、どう記録するかは、引き続き審査会運営の設計に委ねられます。
この「効率化が進む業務」と「引き続き運営設計が必要な業務」をBefore/Afterで整理します。

介護情報基盤によって準備業務(取得・共有)は、事務作業の効率化につなげやすくなります。
一方で、審査会運営にかかわる資料整理・事前確認・合議・結果の記録については、別途“運営の設計”が必要です。
5.介護情報基盤時代に審査会運営で押さえるべき3つのポイント
介護認定審査会(二次判定)の運営として、効果が出やすい要点を3つに絞って整理します。
なお、介護情報基盤は、紙のやり取り削減や事務負担軽減といった効率化だけでなく、医療・介護の連携強化や、本人の状態に合った適切なケアの提供など、介護サービスの質の向上につなげることも目的とされています。
だからこそ、審査会運営も「情報を集める」だけで終わらせず、合議の質と運用の安定を支える形に整える視点が重要になります。
①「資料のたどりやすさ」を標準化する(資料整理)
資料がオンラインで届くようになっても、申請者ごとに必要な情報を的確に確認できなければ、当日の負担は減りません。申請者単位で資料を整理し、
必要箇所にすぐ確認できる共通の“型”を持つことが重要です。
(例:申請者ごとのまとまり/並び順/見出しの付け方を統一する)
②「事前確認」を前提に、当日の合議を設計する(事前確認)
当日に初見で読む運用のままでは、議論が長引きやすくなります。
事前に委員が確認し、論点を持ち寄れる状態をつくることで、当日は「判断」に集中しやすくなります。
(例:事前確認の締め切り/論点の置き場/当日の確認順を決める)
③「結果の記録」を後工程につなげる(結果記録)
審査会は、終わった後にも業務が続きます。
二次判定結果を確実に残し、必要に応じて出力・共有できる形に整えることで、属人化や転記負担の抑制につながります。
(例:記録の担当と確定手順/保存場所/後工程への受け渡し方法を定める)
補足:介護情報基盤導入後に“差が出る”ポイント
介護情報基盤で「情報が集まる」状態が整っても、審査会の結果をどう整理し、どう共有するかは、運用側の設計として残ります。
そのため、上記3点は、審査会開催までの準備業務の改善とあわせて進めるほど、効果が出やすいポイントです。
特に、合議の質(論点が揃い、判断に集中できる)と運用の安定(回ごとにブレない)は、運営を整えるほど底上げされやすくなります。

6.最後に|審査会運営の整備を具体化する「選択肢」
介護情報基盤は、「情報が整う」方向性をつくります。
だからこそ次の段階として、審査会運営を「資料整理」「事前確認」「当日の進行」「結果記録」まで含めて整えることが重要になります。
運営整備の方法は自治体ごとにさまざまですが、選択肢の一つとして、審査会運営に特化したツールを検討する方法もあります。
moreNOTEの「介護認定審査会デジタルパック」では、審査会資料PDFの自動解析・申請者ごとのファイル自動分割、事前判定入力・集計、2画面表示、オンライン会議連携、二次判定結果の入力保存・エクスポート等に対応しており、審査会運営の効率化を検討する際の選択肢の一つです。
審査会運営の改善を具体化するための検討材料として、「審査会運営改善(資料整理・事前確認・結果記録)」に関する資料をご用意しています。
機能一覧だけでなく、運用イメージや導入までの流れも含めて整理しています。
まずは資料で全体像をご確認ください。
※参考データ(本文で言及した出典)
・ 厚生労働省「介護情報基盤について」:介護情報基盤の概要、導入スケジュール、介護WEBサービスの位置づけに関する説明に基づく。
・ 国保中央会「介護情報基盤ポータル」:介護情報基盤の導入目的・利用イメージに基づく。
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